7/1の6巻発売までに名言レビュー記事を全巻書こうと思って、5巻から始まり、1巻2巻・・・そして、やっと最後の4巻に来ました。
4巻は、なんと言ったらいいのかな~。ある意味、少しストレスのたまる巻です。
花ちゃんや誉さんと私の感情が同期してしまっているからかもしれません。
初めて2週間という今までで一番長い帰省が終わり、任地に帰っていく誉さん。
お互いにこれまで以上に寂しさが募ります。
離ればなれに暮らす二人の姿が見ていて痛々しいのです。
この先のきっと明るい未来への序章となる4巻です。
ざっくりあらすじ
2週間のお正月休みが終わりに差しかかります。
誉さんは、田中村に来るようになってから、いろいろと思いを巡らせるようになったと言います。
立花家に生まれついた因果、田中家に婿入りした因果──。
元旦の朝、花ちゃんは誉さんを凧揚げに誘います。
一面の雪原に初日の出が昇り、すべてを包み込むような光が差し込む光景の中で、誉さんは、不安や恐れさえも溶かされていくような思いを抱きます。
やがて帰省が終わり、誉さんは任地へ戻っていきました。
ふたりは再び離れ離れの日常に戻りますが、今まで以上に寂しさが募っていきます。
花ちゃんの胸のうちには、ある“我儘”が芽生えていました。でも風邪を引き、看病してくれる家族──とりわけ母の思いに触れ、その気持ちは口に出せずにいました。
そんなある日、花ちゃんの元気のなさを気にかけた友人が、興行見物に連れていってくれます。
バイオリン、浄瑠璃、落語、唄……いろんな芸を見聞きして、心は少しずつほぐれていきました。
その中でも「ゴンドラの唄」が特に心に残ります。
「今日はふたたび来ぬものを──♪」
その夜、誉さんにこのことを伝えようと、葉書きを書くことにします。
新聞紙に下書きをしているとき、不意に目に入ったのは、戦況悪化を伝える記事でした。
その瞬間、花ちゃんの胸に積もっていた思いがあふれ出します。
「今日はふたたび来ぬものを──♪」歌詞が頭の中を巡ります。
花ちゃんは父と母に向かって、誉さんのもとへ行かせてほしいと、願いを伝えるのでした。
💬名言1:「ああ、光が満ちる 夜が明ける」
大晦日の夜、みんなで団欒をしている最中に花ちゃんは疲れて眠ってしまいます。
花ちゃんを抱えて、布団に寝かし、その寝顔を見つめる誉さん。
昼間に心に引っかかった因果と言う言葉が頭を巡ります。
花ちゃんの婿となり、ここに来た因果は何なのか。もし花ちゃんがいなくなったとして、これまでのように因果応報と諦められるのか、またそんなことを考えて、自らを不幸に追いやる自分はなんて臆病なのか・・・いつのまにか眠ってしまいます。
翌朝まだ暗いうち、元気いっぱいの花ちゃんに起こされ、凧揚げに連れていかれます。
凧の糸を持たされて走る誉さん。凧が澄んだ青空に上がり、振り向くと初日の出の光を浴びる花ちゃんが笑顔で両腕を大きく振っている。その光景に・・・
ああ 光が満ちる 夜があける
4巻 第33話 因果の話
なんて 鮮やかに 力強く
そして、すべてを包み込むような太陽の光。空には凧が悠々とはためいて上がっている。
笑顔で誉さんに駆け寄る花ちゃん。
戸惑いも 不安も 恐れさえ
4巻 第33話 因果の話
すべてを包み込んで
考察と感想
5巻までの中で、私がいちばん好きなシーン。
そして、もっとも心に残っている場面です。
私は「光と影」の画が好きなんですが、この場面はまさに──光がすべてを包み込んで、影さえもあたたかく感じるような光景。
誉さんの中にあった、幸せへの違和感や、どこか後ろめたい気持ち。
それに、身に覚えのない“業”のようなもの──
ずっと澱のように残っていたそれらが、雪に照らされ昇る朝日の中で、少しずつ溶けていくような感覚。
寝ぼけ眼の誉さんが見た、花ちゃんのシルエット。
頬にあたる冷たい空気すら、朝の光がふわっとあたためてくれる。
あの瞬間、誉さんはようやく「この幸せを受け取っていい」と、自分で自分を許せたんじゃないかと思うんです。
もしかしたら──言葉にできないほど神々しい光景の前で、自分のモヤモヤなんて本当にちっぽけだって、ただ感じるしかなかったのかもしれない。
とにかく、誉さんにとって大きな“起点”になったシーンだと思います。
まさに『夜があける』なのですよ(泣)
……なんか、ジワジワくる~
💬名言2:「ひたすら愛すべき人です」
ソリを引いて誉さんを駅に送るオトウ。花ちゃんは見送りに行きませんでした。
その道中、オトウは誉さんに花ちゃんのことを語ります。姉3人が嫁に出てしまったので、花ちゃんが文句も言わず、総領の娘としてやってくれていること。
そして、改めて娘と末永くやっていってほしいと伝えるのです。
それに答える形で、誉さんは続きます。
「花さんはもう、かけがえのない人です。」「健やかで 聡明で ひたむきで 強い・・・」と。そして、
・・・ひたすらに 愛すべき妻です。
4巻 第35話 花ちゃんがお見送りする話
考察と感想
こんな愛の表現、私は今まで知りません!
「ひたすらに」──こんなにも静かで、強く、まっすぐな想いを感じさせる言葉があるなんて。
自分の影に光を差し込んでくれた花ちゃんを、もう愛さずにはいられない。誉さんのそんな心の奥底が滲み出るような場面でした。
けれど、そこにあるのは、ただの「愛」では収まりきらないもの。
過去も痛みも、存在そのものを丸ごと包み込むような、もっと大きくて深い、言葉にしきれない想い——そういうものが、確かに感じられました。
こんなふうに想われたら、どれだけ幸せだろう(泣)
一方のオトウは、まさか二人がここまで惹かれ合うとは思っていなかったのかもしれません。
離れて暮らさせていることへの罪悪感が、募っていたんでしょうね。
だからこそ、花ちゃんのことをぽつぽつと語りながら、誉さんに託す気持ちもあって、確かめたかったのかな。
そして誉さんは、迷いなく、花ちゃんへの強くて確かな気持ちを――
「愛」以上の、何か大きなものを、まっすぐに伝えたのです。
これでもう、オトウの気持ちは決まったのだと思います。花ちゃんを託せると。
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💬名言3:「今日は ふたたび こぬものを~♪」
誉さんが帰ったあと、花ちゃんはめったに引かない風邪を引いたり、どこか元気がない様子でした。
それに気づいたお友達が、公民館で開かれる興行見物に誘ってくれます。
久しぶりのお出かけ。浄瑠璃、落語、バイオリン、唄などを楽しむ中、特に花ちゃんの心に残ったのは「ゴンドラの唄」でした。
♪いのち短し恋せよ乙女~ 黒髪の色褪せぬ間に 心のほのお消えぬ間に
4巻 第41話 ゴンドラの唄の話
今日はふたたび来ぬものを~♪
考察と感想
たまたま耳にした「ゴンドラの唄」。
その歌詞が、今の花ちゃんの心に深く響きました。
「いのち短し恋せよ乙女」──若い娘ならば、ただの流行歌として受け流すところを、花ちゃんはまるで自分の心を代弁するように感じ取ります。
今この瞬間を、誉さんと一緒に過ごしたい。
離れている時間が、惜しくて仕方ない。
軍人である誉さんに、いつ何があるか分からないという現実。
それが「今生の別れ」になるかもしれないという、重く切実な思い。
でも花ちゃんは、田中家の総領の娘として、母の想いを知る身として、自分の本音を打ち明けることができずにいたんですね。
優しい子ほど、親の期待や責任をまっすぐに受け止めてしまって、そして「悲しませちゃいけない」って、自分を追い詰めてしまうからね。
そんな花ちゃんの胸に、戦況悪化を伝える新聞記事が飛び込んできます。
その瞬間、「今日はふたたび来ぬものを──」という歌詞と現実が重なって、心に溜めていた思いが一気にあふれた。
「誉さんのところへ行かせてください」──
やっと口にできた、その言葉。
読んでいて、「よく言った、花ちゃん!」と胸が熱くなりました。
それはごく自然な気持ちで、誰かを大切に思う人なら誰もが共感する願いだったと思います。
動画を埋め込みました。藤圭子さん(宇多田ヒカルさんのお母様)の歌う「ゴンドラの唄」です。
※音量にご注意を。
まとめ 4巻は「夜明け」です。
お正月休みが終わり、ふたりは再び離れ離れに。
深まる想いと、募る寂しさ。
そんな中で描かれるのは──
🌅 誉さんが初めて自分の幸せを受け入れた瞬間
👨👧 花ちゃんへの想いを語る誉さんの告白
🎵 花ちゃんが一歩踏み出す決意のシーン
この巻は、ふたりが本当の「夫婦」になるための大切な一歩。
切なくて、あたたかい“夜明け”の物語です。
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